PTSDの分類と経過
ストレス因子に暴露された後に症状が起こり、上記のような症状が1ヶ月以上続いた場合に、PTSDと診断されます。 発症のタイミングは、外傷体験の直後から症状を呈する場合もあれば、数週から数ヶ月の潜伏期間を経て、発症することもあります。外傷体験の直後にPTSDと同様の臨床症状を発症したものの、症状が1ヶ月以内に収まった場合は、「急性ストレス障害」と診断されます。
急性ストレス障害は、PTSDの早期の病態といえます。急性ストレス障害と診断された後、1ヶ月経過しても著しい症状が持続した場合、結果的にPTSDの診断基準を満たすことになります。
ストレス因子に暴露されてから、1〜3ヶ月の期間のみ症状が続いた場合は、「急性のPTSD」、3ヶ月以上にわたって症状が続いている場合は、「慢性のPTSD」、ストレス因子の暴露後、6ヶ月を超えてから発症した場合は、「発症遅延型のPTSD」と分類されます。
PTSDの経過は、原因となる外傷の種類によっても異なります。
例えば、性的暴力の被害を受けた場合、直後には9割以上の方がPTSDの診断基準を満たすものの、6ヶ月後には4割程度まで減少することが報告されています。
一方、性的暴力以外の調査では、直後には6割程度の方がPTSDの診断基準を満たすものの、6ヶ月後には、1割程度まで減少することが報告されています。
PTSDの心理療法
自律神経系は、通常、心と体の状態を活発にする交感神経系が優位の状態と、心と体を休ませる副交感神経系が優位の状態との間を行き来しています。
しかし、トラウマ体験によってバランスが乱れると、交感神経、あるいは副交感神経が過度に活性化した状態から抜け出せないようになってしまいます。
交感神経が過度に活性化すると、不安やパニック症状、イライラして落ち着きのなさ、怒り、過覚醒、過敏な状態になります。
一方、副交感神経が過度に活性化すると、うつ状態や無気力感、孤独感が強くなります。
自律神経のバランスが乱れている場合は、迷走神経を活性化して自律神経を整える方法が有効です。迷走神経を活性化するには、次のような方法が用いられます。
- ●温度の低い水でシャワーを浴びる
- ●冷たい水を入れた洗面器に顔をつけて息をとめる
- ●紙袋で呼吸をする
- ●横隔膜を動かす、深い腹式呼吸
- ●声を出して歌うこと
- ●鼻歌、口を閉じて歌うハミング、うがい
- ●運動やマッサージ
- ●人と交流すること、笑うこと
PTSDに対する認知行動療法として、持続暴露療法が推奨されています。無意識に回避している事柄に向かい合い、トラウマに対する想像での暴露や、現実での暴露を繰り返していくことで、トラウマの恐怖が、現実的には恐れる程のものではないことが学習されていきます。